自宅を出た瞬間から もう、帰りたい。
看護師の職業自体は好き
好きだった
いつの間にこの仕事にここまで興味が持てなくなったのか
ただ、目的も余裕もなくとにかく目の前の業務を終えられることを願いながらの勤務。
もちろん神頼み。
自分の力だけで予定通り業務を終える日はきっと来ない。
イレギュラーが起きない勤務はない。
自分がAのために急いで段取りを進めている途中にBの要件で呼ばれ、両手にAとBの用事を抱え急いで移動している途中にも、Cの要件で呼ばれる。
多重責務を無事に果たすことは「プロとして当然」
何らかのミスが起これば、重罪。
いや違う。この状況でこれまで大きなミスが起こっていないことこそが、奇跡と思う。
同じトラックを走り続け、水分補給も休息も最低限。
疲れを回復できる十分な休憩は全く得られず消耗しながら終わりの見えない同じ道を走り続けている。
ゴールがあるなら、ゴールに向けて全力で走ることができる。
長距離レースだとしても、スタート時にゴールテープの位置は決まっている。そこまでのペース配分を考えながら自分の戦いができる。

上司は毎年問いかけてくる。あなたの目標は?
考えたこともない、考えてもどんな姿も出てこない。
周りを見渡しても …目標が見当たらない
若手の時は毎日に必死で考える余裕がなかった。今は振り返ることも考えることもできる。
10年異常働いてきた医療業界。
風向きは変わらない。
やりがいのある仕事。続けたいとも思っていた。
今はもう…
目標が見えない
ありがたく産休育休を取得。組織で真面目に働いてきた社会人として当然取得するべき制度である。
女性の多い職業ではこの重大なライフイベントすら、タイミングによっては上司や同僚からのため息が聞こえることも少なくない。
2年目のある日の朝礼で所属長が「この忙しい時に…」などと罪を犯したかのように先輩の妊娠報告した日を忘れない。若手から特に慕われていた偉大な先輩だった。
仕事への姿勢も知識も判断力も全て憧れる存在が、長年活躍した現場で上司からこのような扱いを受ける業界なのか。
この業界で頑張った先にあるものは、何か。その答えが見つからないまま自分のライフステージも変化する。
幼児2人保育園に入園でき、復帰した。
夫が保育園のお迎え時間までに退勤できることはまずない。
親のサポートは基本的にない。そういう事情もある世帯は多い。自分たちだけではない。
朝の支度を終え保育園へ送り届け、出勤時間は申し送り時間ギリギリ。
業務内容は復帰前とほぼ同じ。
残務なく退勤したいのに、どうしても残る雑務。
誰かに押し付けてしまう申し訳なさと最後のお迎えになった申し訳なさが合わさり汗と涙の帰宅。
保育園に預け、仕事を続けるため選択した時短勤務。
週6日勤務、子どもの行事参加も前々からの交渉が必要。
(2ヶ月以上前からわかっている行事ばかりではない)
上司もギリギリの人員配置に疲弊していることは理解している身である。
綱渡りの人員配置、ちょっとした風で大きく揺さぶられ、少なからず心も痛む。
給与は夜勤ありフルタイム時より10万円減、保育料は約8万円。1年目の年収を下回る。
週6日勤務し、基本8時〜18時まで保育園へ預け手元には家賃の半額にも満たない収入。
何を目指して日々仕事をしているのだったか。
張り詰めた糸は突然切れる
突然あらわれた異常。
口が開かなくなり食事のたびに激痛で食べられなくなる。
痛みとストレスが重なり感情のコントロールも難しくなった。
家族へ向けてしまう怒り。
何であんなことであんなに怒ったのか、自分でもわからない。
うまくいかない仕事、子育てに空回りつづける日々。
この毎日が良い未来につながることはないことは、ずっと前からわかっていた。
できるだけ人員配置が考慮されるよう、新年度最初の面談で年度末での退職を伝えた。
何かきっかけがあったわけではない。蓄積してきたものにただ、静かに気がついた。
手遅れになる前でよかった。
ありがたいことに、看護師求人は溢れるほどある。
未経験一般企業への転職
看護師の転職先は多く、有効求人倍率は2倍以上。

参考資料2 p.7
仕事探しをしている人ひとりに対して2倍以上の求人募集があるということ。
全職業の有効求人倍率は1倍程度のため、看護師求人に関しては需要がまだまだ高い状況が続いている。
クリニック、訪問看護、介護施設、保育園、検診業務、企業保健師など多くの求人情報が続々と流れてくる。
感じ方は人それぞれ。
これまでの経験を活かしてより条件のいい職場へステップアップのチャンスととらえる人もいる。
いつでも復帰できるともとらえられやしないか。
いつ戻っても求人枠、条件は多くの有資格者に広くひらかれている。
後戻りもできる安心感があれば、他職種へ思い切って踏み出す道も明るい。そう確信した。
30代中盤、幼児が2人、子育てにあてる時間もお金も両方必要だった。
この条件は実は看護師では非常に難しい。
経済面を取るには夜勤をこなすか働く時間を増やす。
または、ダブルワークで働く時間を増やす。(副業が認められている職場は異常に少ない)
子育ての時間を確保するためには、収入を諦めざるを得ない。
新人時代よりも低い給与明細は正直見たくない。
看護師で働いてきて、年数が経過するにつれ時間的にも経済的にも追い詰められてきた。
それならば、同等の条件でも看護師以外の職業を目指すと決めた。
退職を前に就職活動を開始した。30代での未経験転職は書類通過すら難しい。
想定内だったけれど「採用見送り」のお詫びメールが次々に届く。
覚悟はしていたけどやっぱり30代半ばの看護師から未経験転職は分が悪い。
看護師で探すしかない…他職種転職を諦めかけた時、一社面接の機会をいただいた。
給料は同等、オフィスワーク、座り仕事、定時帰り。当然前残業も不要。残業代は15分毎にきっちりとつく。
未経験でも採用の判断をしてくださった素敵な上司のもと派遣社員として転職した。
出社後コーヒーを飲みながら仕事ができること。
自分のタイミングでトイレに行く有難さ。
ランチの間、業務に呼び出されることは一度もない。
仕事の分量を調整することで自分の判断で半日有給をとること。
実は諦めきれていなかった妊活を30代後半でも前向きに開始できたことは、見える景色が変わった。
平日午前中の受診も排卵状況確認のために連日の受診もできる。
以前は平日午前中に受診する時間はとても取れない、産休となるとまた人員不足に拍車がかかるなど、
いつの間にか諦める「べき」と思っていただけだった。
勤務環境によって驚くほど選択肢が広がる。
在宅勤務で直前まで家事ができること、自宅で仕事をしながら宅配便の受け取りができること。
新型コロナウィルス感染症によって休校や休園のときには毎日在宅勤務で自宅で働き続けられたこと。
小学生活に慣れるまで、自宅からゆっくりと見送れたこと、下校時間に自宅で待機できたこと。
一緒におやつを食べながら学校の話を聞けたこと。
仕事と宿題を食卓で一緒に進められたこと。
全てが自分にはないと思いこんでいた選択肢だった。
ここまでの時間を自宅で過ごしながら仕事ができ
日勤常勤(時短勤務)と同じまたは少し多い収入を得られる職場があった。
行動したからこそ手にしたまぎれもない現実。
不妊治療、ストレスが減った、睡眠時間も十分に取れたことなど好条件が重なりちょうど1年で治療を卒業。
無事出産に至った。
転職前の職場で仕事を続けていれば、治療を始めることすらできなかったし家族が増えることはなかった。
そう思うとあの時決断した自分に心から感謝。
自分の生き方は自分で決めていい
いまの職場で仕事を続けるイメージはできますか。
その先に目指す姿は明確ですか。
仕事と職場を往復するなかで得たいものは何ですか。
5年後どんな姿でいますか。どんな表情でどんな生活をしていますか。
あの時あの選択をしていなければ今も時間も収入も増えることがなく、体力、精神力、心の余裕全てがジワジワと削られ続ける毎日を過ごしていたかも。
今より遅いタイミングはない。
そう思って選択してよかった。


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