ずっと張り詰めていた糸
通勤電車の窓から職場が見えたと同時に無意識に涙があふれた
「しんどいのはあなただけじゃない。みんなしんどいよ。もっと苦しいのは患者さんです」
上司のことばを受け止める余裕はない
苦しさを比べたいわけではない
命の現場には職員ひとりの回復をじっくりと待つ余裕などない
「今日はわかりました。明日は勤務調整難しいからね」
大丈夫の一言もない業務連絡と
ほとんど無意識なのか、ため息混じりの対応に苦痛は増す一方
慢性的な人員不足の中で現場を管理することの大変な苦労と苦悩も少しは理解している
ただ、精神論で現場に立ち続けるには無理がある
自分自身が安定していないと、目の前の人を支援することはできない
自分が不安定で壊れてしまっているのにこの現場に立つべきではないと強く思う
今の自分が現場にいることが恐ろしい
失敗に小さいも大きいもなくミスは全て許されない
わからなかった、調子が悪く気づけなかった、次から頑張ろう、は通用しない
甘い世界ではないことはわかっていた
自分には向いていないかもしれない
経験を積むと不安なくもう少し仕事ができるようになるのか
このまま長く続けられるとは思わない
離れた方がいいかもしれない
違う業界を目指すなら早い方がいいかもしれない
看護師以外の仕事をできる自信もない
苦労してとった国家資格がもったいない気がする
ぐるぐると同じことを考えつづけ
何とか職場へと向かう日々
張り詰めた糸は突然切れる
ふとした時に涙があふれ 眠れない 言葉がでない 寝る直前まで食べつづけ10kg体重が増えた
ユニフォームのサイズアップを届け出た
自分が今、どんな状況であるかよくわからない
ただ、
このままでは何一つ良くならない
限界はすでに過ぎている
職場以外の友人、知人、先輩の話を聞きにまわった
3年以内に転職し美容ナースになった同期
30代ママで異業種に転職した先輩
在宅医療の分野で看護師として活躍中の同級生
管理職となり医療現場を支える先輩
医療系メーカーの開発部門に転職した元上司
製薬会社に引き抜かれる形で転職した同級生
それぞれ違う道を自分らしくすすんでいる
置かれた場所できれいに咲く方法もあるし
その場所で貫く道が見つからない場合
自分の働き方を自分で選ぶことができる
全員のナース時代を知っている。
あの頃と比べ自信に満ち溢れる表情と笑顔が明るく輝いている共通点が心に残った。
自分より目上の先輩でも、年月の経過を感じない整った肌質。若々しい見た目。
これまでのナース経験を活かして活躍する姿は希望となった。
糸が切れてやっと立ち止まった
気づいてよかった
いつの間にか、涙はでなくなっていた
あの時あのタイミングで決断してよかった【30代後半 3児母の転職 在宅勤務中心の仕事への移行例】



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